国際法政策センターでは、CILP Study Seriesと題して、国際法に関する研究会を開催しております。
第1回は6月26日に実施し、安全保障や人権、紛争の平和的解決など、国際法の異なる分野における最近の議論状況について検討を行いました。村角愛佳特定助教(京都大学)と、吉田曉永講師(早稲田大学)をお招きし、ご報告頂きました。また、国際法政策センターからは、山下毅学術研究員が報告を行いました。
山下学術研究員からは、「インド洋海洋境界画定事件先決的抗弁判決―ICJ勧告的意見が二国間紛争に与える影響―」というテーマのもと、国際司法裁判所における勧告的意見制度が、二国間の具体的な紛争を処理するための裁判制度とは異なるものと理解されているにもかかわらず、実質的に裁判制度と同様の運用がされている事例が見られることが指摘されました。
村角助教からは、「なぜ武力行使が国家の同意によって正当化されるのか―国際法における国家主権・人間・武力行使-」というテーマのもと、国際法上禁止されている武力行使がなぜ国家の同意により正当化されるのかという理論的問題に対し、武力行使禁止原則を国家対国家的に理解するという従来の見解の問題点が指摘されました。従来の見解を克服するものとして同原則に「人間的視座」を導入するという独自の理論枠組が提唱され、これに基づき国際法上の「国家主権」や「人間」、「武力行使」の意味の探求が行われました。
吉田講師からは、「人権条約解釈における条約実施機関と当事国の「対立」と「対話」―人権条約解釈の特殊性再考―」というテーマのもと、従来、人権条約の解釈は、国家意思に沿っているか否かで二項対立的に論じられてきたところ、条約実施機関は、条約法条約における条約解釈に関するルールに沿って解釈を行っていない点で共通しているが、当事国と対話を行うか、それとも対立するかを、制度的・政治的文脈によって選択しているとの指摘がなされました。
これらに対して、参加者から、また報告者同士で、それぞれが専門とする国際法の個別分野の知見を踏まえた活発な意見交換が行われました。