7月13日(土)、国際法政策センター主催セミナー「『プラスチック汚染を終わらせる』ために―科学技術および国際法の観点から―」が開催されました。
まず、本セミナーの司会進行を務める植木俊哉国際法政策センター長が開会の辞を述べ、海洋プラスチック汚染という地球規模課題について、分野横断的な検討により問題を掘り下げられることへの期待が述べられました。
次に、熊谷将吾准教授(東北大学大学院工学研究科兼環境科学研究科)が「プラスチックリサイクルの課題と可能性」というタイトルで講演しました。
講演では、プラスチックリサイクルを取り巻く国内外の現状や、マイクロプラスチックの発生源、政府間交渉における日本の主張の概要が説明されました。また、現代社会ではプラスチックが重要な役割を果たしていることを受け止める必要があると同時に、プラスチックの適切な回収とリサイクルが環境汚染の根本的な対策になるとし、リサイクルしやすい製品や、様々なプラスチックに対応できるようなリサイクル技術の開発、そしてリサイクル制度の整備が重要であることが強調されました。
続いて、瀬田真准教授(早稲田大学アジア太平洋研究科)からは、「プラスチック汚染防止条約締結に向けて」というタイトルのもと、プラスチック汚染防止のための新たな条約締結に向けて現在交渉が進められている状況について、国際法の視点からご講演頂きました。
2022年に国連環境総会(UNEA)は決議「プラスチック汚染を終わらせる:国際的に法的拘束力のある文書に向けて」を採択しました。この決議に基づき、海洋プラスチックごみおよびマイクロプラスチックの問題を規律する世界規模での新たな条約を作成するための政府間交渉委員会(INC)が開始され、7月1日には最新の条文草案が公表されたことが紹介されました。
この条約交渉が直面する困難として、産油国と非産油国、また先進国と途上国といった複雑な利害の対立があること、また、プラスチックの環境・人体への詳細な影響について科学的不確実性がある中で、条約内容の確定が迫られている状況であることが解説されました。そのうえで、国ごとに異なる立場をどうまとめるかが注目されると述べられました。
最後に、参加者からの質問を踏まえたパネルディスカッションを行い、プラスチックリサイクルの現状や対応策、および条約採択に向けて検討されるべき課題などについて更に掘り下げる意見交換が行われ、盛況のうちにセミナーは終了しました。
本セミナーは、気候変動という地球規模課題に関する東北大学国際法政策センターによる取り組みの一環です。国際法政策センターでは、今後も地球規模課題の解決に関わる各種の研究活動を行い、その成果を発信してまいります。
(アーカイブ動画は後日アップ予定です。)