BBNJ協定 リンク集

BBNJ協定に関する主要文書

2023年6月19日(現地時間)、ニューヨークの国連本部でいわゆるBBNJ(国家管轄権外区域の海洋生物多様性)協定の条文案が採択されました。60か国が批准すると発効します(第68条1項)。

BBNJ協定は1982年に採択された国連海洋法条約において「公海」や「深海底」など、各国の権限(管轄権)が及ばないとされた区域の生物多様性の保全・持続可能な利用に関する協定です。

BBNJ協定に関する一般向け解説・報道

BBNJ協定については日本でも報道されているほか、国際法学会のエキスパートコメントや解説書が刊行されています。

本田悠介「国家管轄権外区域の海洋生物多様性(BBNJ)と国連海洋法条約」国際法学会エキスパートコメントNo. 2016-1

坂元茂樹・前川美湖(編著)『海の生物と環境をどう守るか 海洋生物多様性をめぐる国連での攻防』(2022年)西本健太郎、

毎日新聞(23/7/2付社説):公海の生態系保全協定 共有財産を守る出発点に

読売新聞(23/3/6付記事):公海の生物多様性守る新条約、内容まとまる…保護区など設定可能に

BBNJ協定の背景

海洋遺伝資源(Marine Generic Resources:MGR)は創薬をはじめとする様々な経済的利益をもたらしますが、深海底での探査を行うことができるのは実質的に、大型の海洋調査船や特殊機材を保有・運用する能力を持つ一部の先進国に限られています。


また、公海における違法な乱獲(IUU漁業)をどのように取り締まるかも問題となってきました。

乱獲を行う漁船についてはイアン・アービナ(黒木 章人 訳)『アウトロー・オーシャン(上・下)』(2021年)に描かれています。

国際法での対応については例えば西村弓「IUU漁業規制に関する国際的規律の展開 」『国際問題』などがあります。

BBNJ協定の交渉過程

BBNJの適切な保全・利用については1990年代から議論が始まりました。
交渉過程一般については『海の生物と環境をどう守るか』所収の西本健太郎「国連におけるBBNJ交渉の展開」などで説明されています。


まず、生物多様性条約のレジーム内で議論が始まり、1995年の締約国会議では補助機関の勧告を受けて、海洋および沿岸の生態系保全と持続可能な利用についての取り組みを進める決議(Decision COP II/10、ジャカルタ・マンデートと呼ばれる)が採択されました。

その後、生物多様性条約の枠組みを超えた制度設計が必要という認識が高まり、2002年の「持続可能な発展に関する世界サミット」(WSSD)で採択された「ヨハネスブルク実施計画」において盛り込まれたほか、関連機関にこの問題に関する検討を要請する2003年の国連総会決議58/240を経て、2004年の国連決議59/24でこの問題についての検討を行う「BBNJ作業部会」を設置することが決定されました。

BBNJ作業部会は2006年2月から2015年1月までの10年間で9回の会合と1回の専門家ワークショップを開催しました。また、BBNJ作業部会での議論を踏まえ、国連総会は2011年に①海洋遺伝資源②区域型管理③環境影響評価④能力構築・海洋技術移転、という4つのトピックを議論の柱とすることを決議しました。

2015年には国連海洋法条約の枠組みの下での条約としてBBNJ協定を作成することが決定され、条約作成のための準備委員会が設置されました。準備委員会の報告を経て条約採択のための政府間会議が実施され、議論が続きました。各国の立場の隔たりが大きい論点も数多くあり、議論は難航しましたが、2023年の3月に条文案の合意にこぎ着け、6月に正式に採択されました。

交渉中や採択前後には、様々な国際機関や産業界の団体などがBBNJとの関係についてコメントしたり、プレスリリースを出しました。BBNJが様々な産業や利害と関わることを示しています。

・条文案合意時プレスリリース

国際海事機関(IMO)

国際水産団体連合(ICFA)条文案合意時プレスリリース(HPは一般社団法人 日本トロール底魚協会のものです)

・パンフレット等

国連食糧農業機関(FAO)パンフレット

国際ケーブル保護委員会(ICPC)パンフレット(交渉中のもの)

関連する機関・データベースなど

ハーバード大学がBBNJに関するデータベースを作成しています。

国際連合法務部海事海洋法課は国連の海洋法に関わる業務を担当しています。

日本の海洋政策(海洋基本計画)を推進するために総合海洋政策本部が置かれています。

調査のための教科書・関連する課題など

海洋法一般の説明は国際法の教科書に載っていますが、海洋法だけに絞った教科書としては島田征夫・古賀衞・佐古田彰・下山憲二『国際海洋法(第三版)』などがあります。

英語の教科書ではChurchill, Lowe and Sander, The Law of the Sea (4th ed.)やTanaka, The International Law of the Sea (4th ed.)などがあります。