[正式名称]
―International Health Regulations (2005)
―WHO CA+: WHO Convention, Agreement or other international instrument on pandemic prevention, preparedness and response
Agreement under the United Nations Convention on the Law of the Sea on the conservation and sustainable use of marine biological diversity of areas beyond national jurisdiction
2024年1月11日(木)、東北大学の新たな研究プログラム「SOKAP-Connect」(Sustainability Open Knowledge-Action Program by Connecting Multi-stakeholder)の一環として、国際法政策センターが共催するパンデミックに関する国際ルールを検討するイベントが開催されます。そこでは、国際法政策センター長の植木俊哉教授(理事・副学長)と副センター長の西本健太郎教授(法学研究科)が、国際保健規則およびパンデミック条約を含むWHOによる新たなルールづくりに関する報告および討議を行います。
国際社会では現在、新型コロナウイルス感染症に対する経験を踏まえ、将来また起こるかもしれないパンデミックに備えたルールづくりが進んでいます。この作業で大きな役割を果たすのが、国連の専門機関である世界保健機関(World Health Organization; WHO)です。
国連専門機関とは、経済・社会・文化・教育・保健その他の分野で国際協力を推進するために設立された国際機関のうち、国連と連携協定を締結した機関のことです(国連憲章第57条、第63条に基づき国連とこれら機関の間には連携協定が結ばれます)。そのうちのひとつであるWHOは、1946年に採択された世界保健憲章(通称WHO憲章)に基づき、「全ての人々が可能な最高の健康水準に到達すること」を目的として1948年4月に設置されました。2023年12月現在、194カ国が加盟し、世界の人々の健康を守るための広範な活動が行われています。
感染症など疾病の国際的な伝播を最大限防止するための国際的なルールとして、WHOは「国際保健規則」を定めていました。国際保健規則とは、International Health Regulationsのことで、IHRという略称で呼ばれることもあります。今日有効な国際保健規則は、2003年のSARS(重症急性呼吸器症候群)の流行等の経験を踏まえ、2005年に制定されたものです。現行の国際保健規則では、地域・国家レベルの「コアキャパシティ」を規定しています。これは、空港、港湾、国境等での日常的な衛生管理と、緊急事態発生時への対応に関して国や地域が整備しておくべき基本的能力を強化することを指します。しかし、新型コロナウイルスの流行下では、このコアキャパシティに課題があった途上国はもちろん、それを十分に備えていたはずの先進国も大きな影響を受けてしまいました。
そこでWHOは、新型コロナウイルス感染症の経験を踏まえ、2つの新たなルールづくりに取り組むことを決定しました。ひとつが現行の国際保健規則の改正で、もうひとつが「パンデミックの予防、備え及び対応に関する世界保健機関の新たな法的文書」、通称「パンデミック条約」という新たな法的文書の作成です。2024年5月の採択を目指して、同時並行で作業が進められています。これら2つのルールが相互に補完して、世界の公衆衛生に関するより実効的なルールが形成されることが期待されます。
世界保健規則の改正およびパンデミック条約の作成に関する交渉と、これら条約のインパクトを正確に理解するためには、国際法学を中心とする社会科学の観点だけでなく、医学、薬学、公衆衛生学の観点等も含めた学際的な検討が必要です。東北大学国際法政策センターでは、東北大学が積み重ねてきた総合知に基づく幅広い視座から、地球規模課題に関するルール作りの最新動向を検討してまいります。